2回目の緊急事態宣言の効果とその後

記事編集日 2021.4.19

約2か月半にわたった首都圏1都3県の緊急事態宣言は3月21日で全面解除されることになりました。今回はこの2回目の緊急事態宣言の意義と解除後の動向、新型コロナに対して世界ではどのようになりつつあるのかをまとめました。

 

新型コロナによる2回目の緊急事態宣言の意義と解除後の動向

3月21日をもって関東一都三県の緊急事態宣言が解除されました。

宣言直後の1月8日の新規感染者7949人が最大で、以降徐々に減少していって3月8日は最小の600人まで下がりましたから、緊急事態宣言の意義は十分にあったと思われます。しかし緊急事態宣言が解除されると人との接触が増えますので、また最近増加傾向にあります。2回目の緊急事態宣言は会食にフォーカスを当てて十分な効果がありましたが、その効果が弱まっているのが現状です。

一足先に解除された関西圏の大阪府や兵庫県はすでに感染者は明らかな増加傾向となっており、飲み歩く人が増えたことを考えると、やはり会食が感染拡大の原因になっているのは明らかです。今回の緊急事態宣言は、この原因がはっきりしたのが大きいと思います。

 

これは3月30日の都道府県別に見た新規感染者数ですが、大阪は既に東京を超えています。そして31日には大坂で590人、東京で414人の新規感染者が確認されています。

 

ワクチン接種

新型コロナのワクチン接種が2月17日より開始されました。

3月31日時点では総接種回数は100万回を超えています。対象は16歳以上で1人2回分が無料で受けれます。先行医療従事者から始まり一般の方には郵送で届くようです。ワクチンはファイザー社製です。

 

我々一般人が受けれるのはもう少し先になりそうです。海外で開発・承認されたワクチンには主に米ファイザー、米モデルナ、英アストラゼネカ、米ジョンソンエンドジョンソン社製のものがあります。他にも中国製やインド製、ロシア製のものも使われています。特に中国は新興途上国を中心に輸出を続け、生産量も約2憶3千万回分と欧米を圧倒しています。これは先進国のワクチンが中々手に入りにくい、中低所得国の限られた選択となっている面もあります。

 

mRNAワクチンとは新型コロナウィルスの遺伝子情報を持ったmRNAを投与することで、体内で新型コロナの抗原タンパク質に翻訳され、体内の免疫機構によってそれに対する抗体ができるという仕組みです。従来の不活化ワクチンに比べて短時間で安全に作れるメリットがあります。一方新しい技術なのでどのようなリスクがあるかは分かっておらず、冷凍輸送や保管設備が必須です。有効性が95%というのが凄いところで、一般のインフルエンザワクチンでも50%を目安に作られています。

ワクチンの副反応として接種部位の痛み、疲労、頭痛、筋肉痛、発熱等がありますが数日で軽快へ向かうようです。

 

新薬

新型コロナウィルスの治療薬の開発も、病態の解明が進むにつれて加速しおり、年内にも実用化される見通しがたってきました。新型治療薬で注目を集めるのは米メルクやスイスノバルティスです。感染割合を統計的に評価できるワクチンに比べ、発熱や咳等の症状改善、入院期間の短縮、死亡率の変化等多岐に渡る項目で評価しなければいけないため治療薬の開発は遅れてきました。世界的な封じ込めにはワクチンと新薬の両方が必要です。

 

まん延防止措置

「まん延防止等重点措置」の適用が5日、大阪、兵庫、宮城の3府県の計6市で始まりました。これは緊急事態宣言とは似て非なるもので、政府が指定した都道府県の知事が市町村単位で適用できるものです。飲食店に対して時短のみ要請や命令が可能で、従わない場合は20万円以下の罰金が科せられます。期間は大型連休を含む5月5日までの1カ月間です。厳しい時短要請に繁華街は嘆くよりありません。

 

大阪の新規感染者数の推移

 

兵庫の新規感染者数の推移

 

宮城の新規感染者数の推移

 

東京の新規感染者数の推移

東京に比べ、大阪、兵庫、宮城は新規者数が激増しています。これを見ても分かるように緊急事態宣言にはやはり効果があったと言えそうです。大阪は2月末で緊急事態宣言が解除されましたが、一ヵ月でまた厳しい対策を講じなければならない羽目になりました。JR大阪駅では5日朝、大勢の利用客が行き交う普段と変わらない通勤風景が見られています。

東京都でも7日新規感染者が2ヶ月ぶりに500人を超えたことから、蔓延防止措置の要請準備に入りました。

 

変異株の拡大

新型コロナの変異株も大阪、兵庫を中心にだんだん国内で増えてきています。

変異株とは新型コロナの遺伝子が突然変異を起こしたもので、これまでのものより感染力が高く、重症化しやすい傾向にあります。新型コロナウィルスも生命体ですので、生命維持のためよりパワーアップする方向に進化していくということです。

 

変異型も世界各国で1000以上確認されており、中でも英国変異株、南ア変異株、ブラジル変異株、フィリッピン変異株が世界で広がっています。中でも英国型は感染力が従来のものより4割も高く重症化もしやすいです。変異株は子供にも感染し、国内では10歳未満で12%と40台に次ぐ多さです。

仙台市では2月以降に新型コロナが確認された検体の一部を解析した結果、8割にE484K変異が確認されたようです。

従来のPCR検査では変異型かどうかまでは分からず別のPCR検査が必要なため検査自体が難航していましたが、変異型の陽性者数が増えているため政府は抽出割合を4割に増やしていくようです。

4月中旬には変異株は国内で主流になってきて、新規感染者の8割は変異株に置き換わっています。関西では英国型が8割を占め、関東では発生地が不明のR1系統と呼ばれるものが46%を占めます。R1系統はワクチンの予防効果が低くなるなど免疫系統を下げる恐れがあり警戒が必要です。

 

世界の情勢

新型コロナの世界情勢は日本の変化を拡大したものと似ています。2月半ばには新規感染者数が激減したもののまた徐々に増えてきており、第4波と言っていい感じです。欧米では減ってきたもののブラジルやインドでの拡大が深刻です。

 

経済

米労働省が2日発表した3月の雇用統計によると、景気動向を敏感に映す非農業部門の就業者数は前月比91・6万人増と2月(46・8万人増)から伸びが大幅に拡大し、失業率も6.0%と、前月(6・2%)から改善しました。新型コロナウイルス感染の減少やワクチンの普及を受けた経済活動の再開で、雇用回復ペースが加速していることが示されています。そしてそれを受けNYダウも5日3万3527ドル19セントと過去最高値を更新しました。

 

4月7日時点ドル/円の月足と株価です。この3カ月で随分と回復したのが分かります。

 

後遺症

新型コロナの後遺症に苦しむ人が増えています。後遺症には味覚嗅覚障害、倦怠感、息苦しさ、脱毛、睡眠障害、記憶障害、頭痛、間接通等があります。後遺症に苦しむ人の中には休職や退職追い込まれる人も少なくなくありません。後遺症は分かっていないことが多く、医療機関に診断書を依頼しても断られるケースが多いです。症状の多様性や一般の臨床検査では異常が見つからないことが診断を難しくしているからです。

 

WHOの中国調査団

世界保健機構(WHO)の中国調査団は30日、新型コロナウィルスの起源は動物から中間宿主を通じて人に感染したとの仮説が最も有力と発表しました。一方武漢の研究所からウイルスが流出したと疑う説は「極めて可能性が低い」とほぼ否定し、米国が主張した研究所からの流出説は極めて可能性は低いと結論付けました。

しかしこの調査に納得する人は極めて少ないです。1年以上も経った後の調査で、証拠を隠蔽するに十分な期間ですし、中国が最初に調査を拒んでいた理由も分かりません。改ざんされた設備を見せつけられてそのまま評価したとしか思えません。

 

増える大麻押収量

コロナ禍で大麻の押収量が4割も超えました。これはアメリカの一部の州やカナダで合法化された液状大麻で、航空貨物を使った密輸によって日本へ入ってきたものです。ネットでも入手できてしまうので、大学の運動部員による大麻使用が相次いで発覚したり、タレントや俳優などの著名人だけでなく、一般社会にも大麻が広がっている現状が浮き彫りになっています。

合法化を望む声も意外に多いですが、人体に有害な薬物ですので日本で合法化されることはまずないと思います。

 

まとめ

変異株の広がりは懸念されますが、ワクチンの接種開始や新薬の最終段階と第4波が見えている中で割といいニュースが多い感じがしました。この一年で大分新型コロナに対しての解明が進んだからだと思います。アメリカの経済回復というのは今後の明るい兆しを示しているかのようです。

しかし日本で言えば大阪、宮城、神戸と蔓延防止措置を取らなければならなくなるほど増えており、これは緊急事態宣言を解除した東京での今後を予測するのに悪いニュースです。7日の東京の新規感染者は555人と2ヶ月ぶりに500人を超えました。同日大阪では719人と過去最高で重症用病床の使用率が70%以上と大阪モデルで最も深刻な状況を示す赤信号と医療非常事態宣言が出されています。この一年はやはり苦しい一年になりそうです。

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