オンラインカジノにおけるカードカウンテイングの実戦とカジノの対策

ブラックジャックが他のカジノゲームと大きく異なる点は各々試行が従属事象であるという点です。

このためカウンティングがとても有用で、昔からブラックジャックの攻略法として様々な人が試みてきました。

マサチューセッツ工科大学の3人がラスベガスに乗り込んで大勝したのはあまりにも有名なエピソードで、多くのプレイヤーにとっての憧れの存在であり、カジノにとっては恐怖の存在であります。

ここではこのカウンティングがオンラインカジノでできないのかを検証してみたいと思います。

 

 

従属事象の妙味

オンラインカジノのテーブルゲームのブラックジャックは1回毎に使用済みのカードがデッキに戻されシャッフルされるため独立事象ですが、ライブディーラーのブラックジャックは使用済みのカードをデッキから取り除くため、従属事象と言えます。

 

テーブルブラックジャックはこうして1回のゲームが終わると、使用されたカードはデッキに戻されてシャッフルされた状態から始まります。

 

しかしライブブラックジャックの場合は使用されたカードはデッキに戻されず、ディスカードホールダー(左のボックス)へ入れられます。

 

よってライブブラックジャックの場合はネクストゲームでは、シューのデッキカードの構成が変わってしまっているということになります。(使われたカードは含まれていないため。)

こうなると残りのカードに偏りができることになります。これが従属事象の妙味なのです。

 

勝ちやすいカードの構成

次にプレイヤーにとって有益なカード構成と不利益なカード構成を考えてみます。

結論から言ってしまえば以下の理由により、Aと10のハイカードが多い状態はプレイヤーにとって有利といえ、それ以外のローカードが多い状態はプレイヤーにとって不利といえます。

1)Aと10の多い状態はナチュラル(ブラックジャック)が出易く、プレイヤーが勝った場合に支払いが1.5倍になるため。

2)ディーラーは17~21に達するまでヒットし続けなければならないため、ディーラーがスティッフハンド(12~16)の時はハイカードが多いほどバーストしやすくなる。

3)汎用基本戦略を見ても分かる通り、ダブルの時プレイヤーに必要なカードはハイカードであるため、ハイカードが多い状態ほど勝ちやすい。

4)77、88、99などの攻撃的なスプリットはやはりハイカードを必要とする。

5)ディーラーのアップカードがAで残りに10が多いと、やはりナチュラルになる可能性も高まるのでインシュランスが有益になる。

 

つまり残りのカード構成にAと10のハイカードが多い場合はプレイヤー有利と判断して大きく賭け、逆にローカードが多い場合はプレイヤーに不利と判断して小さく賭けるのがブラックジャックのカードカウンティングを利用した攻略法になります。

 

カウント値と期待値

ではどれくらい影響するのか見てみます。以下はシングルデッキからカードを1枚取り除いた後の相対価値になります。

シングルデッキブラックジャックにおけるカードの相対価値
取り除かれたカード プレイヤーの期待値の差異
2 +0.4%
3 +0.43%
4 +0.52%
5 +0.67%
6 +0.45%
7 +0.3%
8 +0.01%
9 -0.15%
10 -0.51%
A -0.59%

ベンチマークのシングルデッキの元々の期待値は-0.02%であるため、例えば5を1枚取り除けば期待値は+0.65%に向上したことになります。Aと5を取り除けば、-0.59+0.67-0.02=+0.06%になったことになります。

 

これを踏まえた上でカウント値を以下のようにします。

カード カウント値
2 +1
3 +1
4 +1
5 +1
6 +1
7 +1
8 0
9 0
10、J、Q、K -1
A -1

IRC(初期設定のランニングカウント)の値に関しては以下の公式に従います。

IRC=4-(4×デッキ数)

※例えば8デッキの場合は、4-(4×8)=-28となります。

そしてデッキに関わらず全てのカウントをし終えるとRC=4となります。

 

次にキーカウントを以下のように決めます。キーカウントとはプレイヤーのアドバンテージが+になった時のカウント値をいいます。

デッキ数 IRC キーカウント
1デッキ 0 +2
2デッキ -4 +1
6デッキ -20 -4
8デッキ -28 -6

つまりキーカウントに達した時点で大きく賭け、達していない時は小さく賭ければ、ユーザーはこのゲームのアドバンテージを得ることができます。

 

賭け額の単位をユニット数で表せば期待値(%)は以下の通りになります。

デッキ数 1~2ユニット 1~5ユニット 1~10ユニット
1 0.2 0.88 1.24
2 0.07 0.69 1.05
6 -0.15 0.26 0.54
8 -0.22 0.16 0.43

つまりデッキ数が小さいほど、ユニット幅が大きいほど期待値は大きくなります。

 

カウンティングの実践結果と考察

上のルールに従いまして、ベラジョンカジノのカジノ・パリスにてカウンティングを実践してみました。

 

カジノ・パリスのルールは8デッキでスプリット後のダブルはなしです。

 

期待値を計算しますと、-0.02(ベンチマーク)-0.55(8デッキより)=-0.57 となります。

8デッキなのでIRC=-28、キーカウントは-6となります。

 

当然ながらカウントは新しいデッキになった時から数えるものとします。

 

実践1
ラウンド毎の出現したカード ラウンド毎のカウント トータルカウント
A,6,10,5,4,Q,7,10,10,J,5,10,2,9,9,K,K -3 -31
3,3,7,5,3,5,4,J,6,Q,K,J,K,10,9,3,J,3,7 +4 -27
K,9,2,6,10,3,Q,A,k,9,6,3,8,J,10 -2 -29
3,3,k,Q,k,2,6,8,K,J,Q,10,6,K,4,9 -2 -31
K,9,2,A,A,10,10,6,3,4,2,Q,7,9,10,8 -1 -32
K,2,2,Q,6,6,Q,7,7,8,J,5,4,3,6 +6 -26
7,5,4,7,J,4,2,6,5,9,9,A,4,A,2,3,8,10,A +6 -20
A,8,10,8,J,10,4,Q,7,Q,6,K,k,9,6,7,6,K -3 -23
5,A,3,7,5,2,A,A,6,K,7,2,10,A,10,Q,2,K,4,6,2,9,J +2 -21
8,A,J,J,6,J,4,K,3,8,A,3,K,4,5,4,J -1 -22
6,3,8,3,J,9,7,8,K,10,8,8,6,7,J +2 -20
K,7,10,K,Q,8,5,4,K,7,5,8,2,2,A,7 +2 -18
2,2,7,5,K,8,7,Q,7,2,J,10,A,2,10,2,7,A,2,9,Q +3 -15

 

 

実践2
ラウンド毎の出現したカード ラウンド毎のカウント トータルカウント
10,8,Q,9,2,9,4,Q,8,J,2,2,6 +1 -27
Q,3,J,8,K,2,2,K,5,6,9,10,8,9,A,J,J,3,6,8,8,8 -1 -28
4,10,K,5,4,8,2,5,6,2,6,9,4,K,2,7,A,6,Q,3 +8 -20
A,7,5,J,4,5,A,4,K,A,4,10,5,A,3 +1 -19
7,10,10,6,5,5,3,Q,J,K,4,2,3,J,J,10,6,Q,9,k,A -2 -21
7,5,7,J,10,2,2,9,K,2,6,K,10,k,5,J,A,9 0 -21
4,Q,5,3,9,J,7,3,Q,2,2,K,3,6,K,5,4,10 +5 -16
5,3,Q,3,8,10,2,J,8,J,9,K,8,K,10 -3 -19
Q,K,9,5,6,7,9,A,J,6,5,10,A,10 -2 -21
7,10,10,3,9,2,6,K,10,10,5,A,9,9 -2 -23
8,A,3,8,7,J,6,7,10,K,K,2,4,A 0 -23
K,J,10,5,A,5,2,5,6,J,10,J,10 -3 -26
7,7,10,8,3,J,3,K,4,A,2,7,7,3,8,A,9,Q,J,9,A,10,K,6,Q -1 -27

 

実践3
ラウンド毎の出現したカード ラウンド毎のカウント トータルカウント
4,10,5,6,2,7,J,A,9,3,J,3,J,Q,8,5,6,2,A +3 -25
4,Q,3,6,3,j,8,7,2,7,10,5,k,10,8,2,A,7 +4 -21
K,J,8,2,3,6,7,10,K,k.A,3,5,9,K,J,10,K,9 -4 -25
8,5,5,7,4,8,7,J,5,A,2,A,2,6,3,8,Q +6 -19
J,7,Q,8,5,4,7,3,3,6,A,5,9,A,3,4 +6 -13
8,7,7,2,Q,7,K,9,7,6,3,10 +4 -9
9,10,5,2,6,10,A,9,4,8 +1 -8
9,Q,K,K,6,8,3 -1 -9
K,5,10,9,8,K,8,j,2,A,5 -2 -11
4,7,9,10,Q,A,J,K,4,9,8,3,4,4,Q 0 -11
7,3,5,K,5,9,A,10,2,A,2,5,J,A,4,8,J +1 -10
4,Q,J,Q,9,K,10,Q,J,Q,10,6,5,A,5 -6 -16
K,2,8,3,7,8,Q,7,7,J,3,J,A,2,2,3,3,3,8 +6 -10
2,2,A,7,8,8,j,8,Q,9,A,10,9 -2 -12
A,K,9,A,Q,J,4,3,6,7,6,6,5,2,6,A,k +2 -10
K,k,4,2,9,2,9,10,9,10,4,10,8,7,10,10,8,4,K -2 -12

 

大体1デッキ辺り13~16ラウンドで終了してしまいます。

 

理由はカットカードが大体シューの真中辺りに入っているからです。赤いカードがそうですが、これが出るとこのラウンドが最後で、次のゲームから新しいデッキ(後ろに控えている青いカード)になります。

全体のデッキのカードの使われる割合をペネトレーションといいますが、これが50%くらいしかないのです。

 

カットカードがもっと深い位置にあればいいのですが、これがシューの真中辺りですと8デッキでは、カードの偏りが強く起こる前に終了してしまう感じです。

結果としてキーカウントの-6に達する前に終了ということになります。

実践でも最も近づいたのは-8ですが、-6に達することはありませんでした。

 

考えてみますと、オンラインカジノですからカウントもリアルに比べて容易ですので、ユーザーにとって期待値の高い状況をわざわざオンラインカジノが作るわけがないですよね。カードの偏りが起こる前にそのデッキを終了してしまうというのがオンラインカジノ側のブラックジャックのカウンティングに対する対策でした。

 

カウンティングでより多くのアドバンテージを得るために

最後にランドカジノのブラックジャックのカウンティングでより多くのアドバンテージを得る条件をまとめておきたいと思います。

○より少ないデッキ数を選ぶ(少ないデッキの方がカードの偏りは起こりやすく、プレイヤーに有利な状態つまりハイカードが多い状態になることが多いです。)

○ベットスプレッドを大きくする(有利な時と不利な時に賭ける金額の差が大きいほど利益も大きくなります。)

○より深いペネトレーションを求める(使われるカードの割合が多いほどRCはピボットポイントに辿り着く可能性は高くなります。)

○少人数のテーブルを選ぶ(少人数プレイの方がデッキ毎のゲーム数が多くなるため、有利な状態で賭けれるタイミングが多くなります。)

 

そしてこれは忘れてはいけないのですが、カウンティングをしても負ける時は負けます。あくまで期待値が高いというだけであって、確率の低いこともたまには起こりえます。

 

出禁

カジノにも出禁というものがあります。カジノ側にとって不利益だと思う人間を出入り禁止にすることです。特にブラックジャックはカウンティングによって有利な状態か不利な状態かを測れてしまうため、カウンティングをやっていると思うプレイヤーがいれば、出禁にしたり、もっと不利な状況(デッキを増やしたり、カッとカードを浅くしたりだとか)にしたりする場合があります。ですのでカードカウントをする時は何気ないふりしてカウントしなければなりません。間違っても口に出したりしてはいけません。

カジノの豪華な外観や内装、人件費、株主や投資者への支払い、カジノ部門意外(レジャー施設)の赤字の埋め合わせは当然ゲームの売り上げから賄われるため、カジノ側としてもゲームには負けられないのです。全てのカジノゲームはハウス側に期待値がプラスになるようにできており、長期的にはやはりその期待値通りに収束してしまいますが、ブラックジャックだけはカードの偏りによってはその限りではありません。よってハウスからすれば、カウンティングは天敵なのです。このためカウンティングをやってるような人はいないか、ピットのスタッフは常に見張り続けています。

しかしカウンティングをしているプレイヤーの全てが期待値がプラスにできているわけではなく、数え間違いや大きなベットの躊躇いなどから中々勝てない人もいます。カジノ側もこういう人達は問題にせず、要はカジノに勝つ腕を持っているかどうかで見極めるそうです。面白いことにプロのカウンターは周囲に自分の腕を見せるために、わざと出禁になる者もいるそうです。

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