カジノ法案関連

 

2016年12月カジノ法案「IR推進法案」可決

2016年12月6日「カジノ法案」が衆院で可決されました。カジノ法案とは特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法案でIR推進法案とも呼ばれています。これを受けて特定複合観光施設区域整備法が2018年6月19日衆院を7月20日参院を通過し可決しました。カジノゲームは勿論ギャンブルで、当然ながら日本はギャンブル禁止国です。カジノ法案はこれに例外的な法的根拠を与えるものです。

もともと日本でカジノ解禁が言われるようになったのは2000年当時石原慎太郎都知事が「東京にカジノを作りたい。」と公言したのが始まりでした。やがて自民党内で持ち上がり、これを率先したのが野田聖子議員ですが、小泉純一郎首相が掲げる郵政民営化に反対していたため自民党を離党し、カジノ解禁は一旦影を潜めます。しかし安倍晋三内閣が発足しますと再び自民党に戻ってきました。

またちょうどその時シンガポールでカジノが解禁され、観光客が増え、GDPが大きく伸びたことを受けまして、2010年に超党派の議員(自民党が最も多い)で構成されます国際観光産業振興議員連盟「IR議員」が誕生し、翌年にIR推進法案を発表し、2013年12月に議員立法の形で衆議院に提出されました。そして3年越しに可決されたわけです。

IR推進法案とは言わばIR推進を政府に促す法案であってまだ具体的なものではありません。実際どこに作るのか、運営やルールはどうするのか等、具体的なことは今決めている段階なのです。最終決定は政府が下すため、現段階ではカジノを日本に建設しない余地さえあります。しかし動きを見ている限りではやはり建設する可能性の方が高そうです。

 

IRとは

IRとは「Integrated Resort」の略で、統合型リゾートといった意味です。つまりカジノだけではなく、国際会議場、展示場、ホテル、ショッピングモール、レストラン、劇場、映画館、アミューズメント施設、スポーツ施設、温泉といったものが複合した観光施設になります。モチーフはラスベガスです。特に国際会議場や国際展示場は比較的大きなお金が動くトラベラーを呼べる施設で、MICE「Meeting、Incentive tour、Conference、Exhibition」と呼ばれています。要はこれらを集客装置としてお客を呼び込もうというもので、施設をギャンブルではなく文化的・学術的なものにカムフラージュしようとする狙いもあります。実際に他国を見てみますと、ほとんどはカジノによる収益でこれら単独では利益を出すのは難しいようです。

 

カジノとはどういうところか

基本的には広いフロアにいくつものテーブルがあって、それぞれのテーブルにはディーラーがおりカードを配ったりしています。ゲームにはブラックジャック、バカラ、ルーレットがあります。一画にはスロットマシンもあります。窓は閉ざされており外の様子は一切分かりません。国によっても大きく異なります。

小規模なカジノの多いヨーロッパでは高級感を重視する傾向があり、ドレスコードを着用しないと入れないところもあり、まさに王侯貴族の社交場といった感じです。大規模なカジノの多いアメリカは逆に大衆的な開けた空間で、アミューズメントショーやアトラクションなど家族でも楽しめます。マカオも大半はアメリカ資本なのでアメリカの大規模カジノに近いです。

 

カジノを設置する目的

カジノを日本に作る目的は経済効果これに尽きます。ではどれくらいの経済効果があるのかを考えてみます。各国のゲーミング市場(売上高)を見てみますと、2018年のマカオが40施設で4兆1135億円、シンガポールが2施設で5407億円、ネバダ州が272施設で2兆8000億円です。これらから大雑把に推計しますと、複数の施設が稼動すれば日本の売上高は年間2兆円レベルと予想されています。

さらに観光客による収益や効用の増加、地域の活発化も含めれば年間で7~10兆円もの経済波及効果があると言われています。

 

日本が目指しているカジノ

日本が目指しているカジノを決定している範囲で具体化します。

 

日本のカジノは民営である

カジノ事業には建設費や運営費などを含めて5000億円~1兆円ほど必要です。必ず成功するとも限らないカジノ事業に国が税金で投資するわけにはいきません。よって日本のカジノは民営ということになりますが、どこの民間業者が入るのかはまだ決まっていません。当然日本の民間業者にカジノ事業経験があるはずは無く、外資も参入してきています。ラスベガスサンズ社等がその候補です。大方の見方では国内企業と外資の合弁になる可能性が高いと見ています。

 

カジノ利益の分配はどうなるのか

国内居住者に対して6000円の入場料を課し、内3000円が国へ国庫納付金として、内3000円が地方自治体に認定都道府県等納付金という形で納められることになります。(特定複合観光施設区域整備法の176条と177条)

他にカジノで出た収益の内15%が国へ国庫納付金として、15%が地方自治体に認定都道府県等納付金という形で納められることになります。(特定複合観光施設区域整備法の192条と193条)

残りの収益をカジノ事業に携わる企業の、持ち株比率に応じて分配されることが予想されます。

 

ターゲットは誰なのか

先にも述べましたように国内居住者に対して6000円の入場料を課すため、基本的にはマカオやシンガポールを習って外国人、特に中国人がターゲットと見込んでいるようです。しかしこの6000円が高いかどうかというのは個人の価値観ですので、日本人もある程度はターゲットになっているのは明確です。外国人専用カジノではないですので、はっきりとしたターゲットは定めていない感じです。

 

日本国居住者への入場規制

○20歳以上で、マイナンバーカード等の身分証の提示が必要

○1回(24時間)につき6000円の入場料が必要

○連続する7日間での入場回数は3回まで、連続する28日間での入場回数は10回までと限定

 

どのゲームを設置するのか

政府はカジノで提供するゲームを限定する方針で、ルーレット、バカラ、ブラックジャック、スロットの偶然性が大きいゲームのみにしています。スポーツベットや麻雀等は禁止しています。ポーカーはスキルが大きくものを言うゲームですが、世界的にメジャーなゲームですので検討中です。

 

マネーロンダリング(資金洗浄)の防止

カジノと手を組んで、カジノで勝ったことにすれば、簡単にマネーロンダリング(資金洗浄)ができてしまい、闇金を合法的な表金に変えてしまうことができます。勿論どの国もマネーロンダリングは認めていませんが、一部の中国人富裕層や共産党幹部等はマカオのカジノを利用してこれをやっているのも事実です。カジノ側としては手数料が入るため歓迎で、寧ろ相手はVIP客なので大きな収入源なのです。しかし日本のカジノはマネーロンダリングを防止するようです。

 

反社会的勢力と一切関係を持たない

日本でカジノと言えば、一昔前までは一般の人の入れない裏カジノのことで、暴力団関係者が取り仕切っていました。しかし今回のカジノは合法的なものですので、暴力団組織の介入や犯罪の温床になることを断固排除するようです。

 

地域風俗環境の悪化を防ぐ

カジノはギャンブルですので、負けた人が金欲しさのあまり犯罪を犯してしまうことが後を絶ちません。またカジノホームレスが出てしまうことも予想されます。自国民に開放している韓国の江原ランドはその例です。政府はカジノへ入るための身分証の提示や入場制限することで過度にのめりこまないようにし、このような治安悪化を防止するみたいです。

 

機関を設けてギャンブル依存症対策をする

2017年度の厚生労働省の報告によりますと、日本でギャンブル依存症疑いのあるものは320万人も上がり、成人の約3.6%にあたるそうです。世界にほとんどは1%前後なのに、日本だけこのように高いのは身近にパチスロがあるからです。実際にギャンブル依存症の80%近くがパチスロユーザーなのです。これらの依存者には既に対策が必要なのですが、カジノ開放にあたってより増えることが予想されるため、カジノへの入場規制の他、機関を設けて対策するそうです。

 

カジノはどこにできるのか

2018年4月27日、政府は日本へのカジノ設置を当面3箇所以内と限定しました。但し最初の区域認定から7年後には見直せます。カジノの有力候補地としては横浜の山下ふ頭、大阪の夢洲、北海道の苫小牧、長崎のハウステンボス、東京のお台場、千葉の幕張、和歌山のマリナーシティ、沖縄の海洋博公園・美ら海らが候補に名乗りを上げています。

 

日本のカジノに参入する企業

候補地が決まれば、次はどこの企業が入って運営するのかです。仮に3箇所だとしたら3つの企業が入って運営することになります。日本企業ではセガサミー、ユニバーサルエンターテイメント、外資ではラスベガス・サンズ、メルコリゾーツ&エンターテイメント、ギャラクシー・エンターテイメント、ハードロック、ウィン・リゾーツこの辺が有力候補となりそうです。特にラスベガス・サンズは1兆円以上を投資する準備があると意気込んでいます。

 

いつごろ開業されるのか

最初は東京五輪の2020年を目安にしていましたが、これはとても無理ですので、今は2025年頃を目処にしています。

 

私見

ゆっくりではありますが、日本でのカジノ解禁に向けて着実に進行しており、遅くとも10年以内に開業されることはほぼ確実だと思います。

しかしカジノを解禁しただけで儲かるのかと言えばそうとも思えません。日本が目指しているカジノは全うなカジノで、これを見た限りでは規制が厳しすぎるからです。

日本人をターゲットにするなら6000円の入場料は高いし、外国人をターゲットにするならお金を回る仕組みを作らなければなりません。現在外為法では日本への入出国は100万円が上限で、それを超えるなら事前に税関に申告しなければいけません。これではとても話になりませんので、カジノへの大金の持ち運びを国境を越えて容易にできるようなシステムを作らなければならないと思います。

またどの国のカジノでも収益の60%以上はVIP客によるものです。カジノの売上高が世界最大となったマカオの例を見ましても、中国人富裕層からの収益は約60%以上を占めますので、日本でも中国人富裕層の取り込みは成功の可否を大きく左右するものと思われます。彼等は必ずしもカジノでゲームをしに来るとは限らず、マネーロンダリングをしに来る人も少なくありません。マカオのカジノでは手数料を取れるため暗に了承しているのですが、日本では建て前上ではこれを認めていません。

実際には参入した企業は事業としてやるわけですので、顧客にニーズを敢えて外すようなことをするとは思えず、法の目を潜ってやるかもしれませんし、税収の欲しい政府としても黙認するかもしれません。いずれにせよ上に挙げたような全うなカジノを作ったところで、売上は予想の半分以下だと思います。

日本庭園を背景に花札やおいっちょかぶ等日本固有のゲームを取り入れたり、マカオのジャンケット様のシステムを取り入れたり、何か工夫しないと韓国のカジノと大差ない結果になると思います。

 

現在のカジノ解禁に向けた進行状況

現在は特定複合観光施設区域整備法ができ、2020年1月7日にはカジノ管理委員会が設立することが閣議決定しました。カジノ管理委員会とはIR事業者の監督とギャンブル依存症に関する公共政策をする委員会で、5人(任期5年)で構成され、スタッフは約100人だと想定されています。これができればカジノの誘致場所を決定し、参入する企業を決め、着工することになります。

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