ギャンブル依存症

 

ギャンブル依存症とは

ギャンブル依存症とはWHO(世界保健機関)によると癖ではなく病的賭博という項目に分類され、一種の精神的・心理的な病気と見なされています。症状や特徴は以下の通りです。

①賭博にとらわれている。

②興奮を得たいがために賭け金の額を増やして賭博をしたいと思う。

③賭博を抑える、止めるなどの努力をし成功した試しがない。

④賭博を止めたり減らしたりすると落ち着かなくなるかイライラする。

⑤現実から逃避する手段として、または不快な気分を解消させる手段として賭博をする。

⑥賭け金をすったあと、取り戻しに帰ってくる。

⑦賭博への常習性を隠すために家族や他へ嘘をつく。

⑧賭博の資金を得るために偽造、詐欺、窃盗、横領など非合法的手段に手を染めたことがある。

⑨賭博のせいで家族や知人との人間関係や仕事等を危険にさらすか、失ったことがある。

⑩金を借りてでも賭博をしたことがあるか、無心したことがある。

3つ以上該当すれば立派なギャンブル依存症と言えます。7つ以上該当すれば重度なギャンブル依存症で早急な対応を必要とします。チェックしてみて下さい。

 

ギャンブル依存症に限らず依存症は脳の機能的な障害で、依存症患者の脳では報酬系という部分が変化し、本来ならブレーキ役の前頭葉の働きが低くなってアクセルが優位になり、自分の脳が裏切って暴走してしまいます。ギャンブル依存症の場合、たまに大当たりが出ると脳がそれ覚えて、報酬系からドーパミンが放出され、その快感が忘れられなくなってしまいます。

ギャンブル依存症に陥ると最終的には、自分の可処分所得をはるかに上回る金をギャンブルに注ぎ込み、サラ金や闇金から借りても何とか勝負に勝ちたいという強迫観念にとらわれ、周囲の人間を巻き込んで、どこまでもギャンブルを続けてしまいます。症状に幅はありますが、この行き着く心理は皆同じです。

そして意外にも負ければ気が落ち着くのです。その時に自分の立ち位置がはっきりしてはっと我に返り、自分の存在を確認できるからです。ギャンブル中毒者には勝ちたい反面、負けて破滅したいとも願っている相反する感情が存在するのです。

日本でもパチンコ依存症が社会問題になり、毎年のように子供が車内に置き去りにされ、熱中症で死亡する事故が発生していました。全国のパチンコ店で駐車場の見回りを実施したところ、何と1年で56人もの子供を救出したそうです。

 

ギャンブル依存症の割合と内訳

少し古いですが2014年8月、厚生労働省が調査した結果、ギャンブル依存症の疑いのある人は536万人(男性438万人、女性98万人)で、成人全体の4.8%を占めるそうです。特に男性に限ると8.7%にもなります。そしてギャンブル依存症は依存症患者の中で1割弱を占めます。そしてギャンブル依存症の8割がパチスロ依存症です。

これを諸外国で比較すると、アメリカとオランダが1.9%、フランスが1.2%、スイスが1.1%ですので日本の割合の高さが際立っているのが分かります。これは諸外国のカジノと比べて日本のパチスロが身近な所に普及しているためだと考えられています。尚パチスロはEGM(Electronic Gambling Machines)と呼ばれており、世界中の58%に当たる450万台ものEGMが日本にあります。

今後日本にカジノが建設されるとギャンブル依存症が1~2%増えるとカジノ推進派も認めています。

 

ギャンブル依存症の原因

ギャンブル依存症になる原因は分かっていません。ストレスが駆り立てるのかもしれませんが、人は皆多かれ少なかれストレスを抱えており、そして当然皆が皆ギャンブル依存症に陥ってしまうわけではありません。寧ろ陥る方が稀です。

ギャンブル依存症に陥る人は昔からギャンブルが好きだったという人が多いです。20歳前後で一度くらいはパチスロに嵌ったことはありませんか。そういう人達は要注意です。些細なことがきかけとなってギャンブル依存症となってしまうかもしれません。

一方あまりギャンブルに興味を示さない人達は仮にギャンブルをやったとしてもリミッターを外すということはありません。こういう人達はまず大丈夫です。

例えば兄弟で同じ環境で育っても、一方がギャンブル好きで片方が興味を示さないケースもありますので、環境が原因だとも言えません。つまるところ本人の気質による所が大きいと言えそうです。

 

ギャンブル依存症の治療と対策

ギャンブル依存症はアルコール依存症やニコチン中毒のように化学物質の薬理学的作用に基づくものではないので、これといった有効な治療薬というものはありません。

治療法の代表的なものにGA(ギャンブラーズアノニマス)という、同じギャンブル依存症の人が集まるグループに入り、そこで体験を語り合い自分を客観的に見つめ直し、ギャンブル依存症からの脱却を目指すというものがあります。会費とかは必要ありませんので、ギャンブル依存症から抜け出したいという人は連絡してみるか、直接会合に参加してみるといいです。

吃音やアルコール依存症等でも同じような会合があり、同じような立場同士で悩みを打ち明けるのは重要です。

尚家ギャンブル依存症の家族会にギャノマンというものもあります。ギャンブル依存症の家族の対応にお困りの方は一度会合に出席してみるといいです。

ギャンブル依存症の一番の対策としては、兎に角お金を持ち歩かないことです。パチスロ店等誘惑の多い世の中ですので、お金を所持しているとどうしてもやりたくなってしまいます。ギャンブルに関するものからシャットアウトするよう心掛けて下さい。

飲む、打つ、買うというのは3娯楽にあたりますので、一度これらの旨味を味わってしまうと止めるのは難しいです。依存症に陥る前に歯止めを掛けるということを忘れないで下さい。

 

ギャンブル依存症の末路

パチスロ依存症の人は身近に見かけることもあるかと思います。大体20台前半に嵌ってしまうケースが大部分です。それまで学校の中という世界にいたため、外の世界へ身を乗り出すと案外何も分からないで歯止めが掛からなくなってしまうのです。その大部分は金が尽きて止めることになります。

人生が狂うまでやってしまうとうケースは稀ですが、そういう人でも会社や友人、彼女等を失った後に止めるケースがほとんどです。

この一線を超えると自殺や他の病気で死んでしまうことになります。

かくゆう私も学生の頃友人に誘われ初めてパチンコを経験し、初日に10分足らずで1万5千円ほど勝ちました。何だこんなに簡単に金儲けできるのかと思い、以後授業をさぼってパチンコ屋へ行く日もありました。最終的にはお金が尽きて行かなくなりましたが、留年すれすれの単位を落としました。成績はまあまあいい方で国家試験も受かったのですが、そんな私でも陥ってしまうところに恐ろしさがあります。

 

アルコール依存症

似て非なるものとしてアルコール依存症があります。お酒に対して快楽を覚え飲む量をコントロールできなくなり、家族を含めた周囲に迷惑を掛けます。お酒に頼らざるを得なくなり、酒が切れるとイライラしたり手が震えたりします。日本では80万人ほどいるとの報告があります。しかしアルコール依存症は化学物質の薬理学的作用に基づく依存症ですので、ギャンブル依存症とは発症の機序が異なります。アルコール依存症にもいろいろなタイプがありますが、一度飲むとぶっつぶれてしまうまで飲むタイプがギャンブル依存症に陥りやすいです。

 

貴闘力

曙相手に7回も金星を獲得、2000年には幕内最下位で奇跡の12連勝を成し遂げ幕尻優勝を果たした貴闘力もギャンブル依存に陥りました。最初のきっかけは、当時なけなしの金を競馬に注いで大勝したとのことです。やがて十両に昇進すると金と時間ができてますますのめり込むようになっていきました。睡眠と稽古以外はギャンブル付けといった感じです。自身の体験では勝った時の記憶しか残らず、負けた時のことは忘れてしまうそうです。

オーストラリアのカジノで5万円を8000万円にしたことがあるそうですが、その記憶だけは残り、実際はその何倍も負けていると言っています。年収の9割をギャンブルにつぎ込み、引退後には遂に野球賭博に手を染め、それがきっかけで離婚、さらには相撲協会を解雇といった典型的なギャンブル依存症の経緯を辿りました。人生の総額では5億円以上負けたと言っています。今でこそ焼き肉店をオープンしギャンブルから身を引いたそうですが、まだ心の葛藤と戦っているそうです。

コメントは受け付けていません。