ギャンブル依存症

 

ギャンブル依存症とは

ギャンブル依存症とはWHO(世界保健機関)によると癖ではなく病的賭博という項目に分類され、一種の精神的・心理的な病気と見なされています。症状や特徴は以下の通りです。

①賭博にとらわれている。

②興奮を得たいがために賭け金の額を増やして賭博をしたいと思う。

③賭博を抑える、止めるなどの努力をし成功した試しがない。

④賭博を止めたり減らしたりすると落ち着かなくなるかイライラする。

⑤現実から逃避する手段として、または不快な気分を解消させる手段として賭博をする。

⑥賭け金をすったあと、取り戻しに帰ってくる。

⑦賭博への常習性を隠すために家族や他へ嘘をつく。

⑧賭博の資金を得るために偽造、詐欺、窃盗、横領など非合法的手段に手を染めたことがある。

⑨賭博のせいで家族や知人との人間関係や仕事等を危険にさらすか、失ったことがある。

⑩金を借りてでも賭博をしたことがあるか、無心したことがある。

3つ以上該当すれば立派なギャンブル依存症と言えます。7つ以上該当すれば重度なギャンブル依存症で早急な対応を必要とします。チェックしてみて下さい。

 

ギャンブル依存症に限らず依存症は脳の機能的な障害で、依存症患者の脳では報酬系という部分が変化し、本来ならブレーキ役の前頭葉の働きが低くなってアクセルが優位になり、自分の脳が裏切って暴走してしまいます。ギャンブル依存症の場合、たまに大当たりが出ると脳がそれ覚えて、報酬系からドーパミンが放出され、その快感が忘れられなくなってしまいます。

ギャンブル依存症に陥ると最終的には、自分の可処分所得をはるかに上回る金をギャンブルに注ぎ込み、サラ金や闇金から借りても何とか勝負に勝ちたいという強迫観念にとらわれ、周囲の人間を巻き込んで、どこまでもギャンブルを続けてしまいます。症状に幅はありますが、この行き着く心理は皆同じです。

そして意外にも負ければ気が落ち着くのです。その時に自分の立ち位置がはっきりしてはっと我に返り、自分の存在を確認できるからです。ギャンブル中毒者には勝ちたい反面、負けて破滅したいとも願っている相反する感情が存在するのです。

日本でもパチンコ依存症が社会問題になり、毎年のように子供が車内に置き去りにされ、熱中症で死亡する事故が発生していました。全国のパチンコ店で駐車場の見回りを実施したところ、何と1年で56人もの子供を救出したそうです。

 

ギャンブル依存症の割合と内訳

少し古いですが2014年8月、厚生労働省が調査した結果、ギャンブル依存症の疑いのある人は536万人(男性438万人、女性98万人)で、成人全体の4.8%を占めるそうです。特に男性に限ると8.7%にもなります。そしてギャンブル依存症は依存症患者の中で1割弱を占めます。そしてギャンブル依存症の8割がパチスロ依存症です。

これを諸外国で比較すると、アメリカとオランダが1.9%、フランスが1.2%、スイスが1.1%ですので日本の割合の高さが際立っているのが分かります。これは諸外国のカジノと比べて日本のパチスロが身近な所に普及しているためだと考えられています。尚パチスロはEGM(Electronic Gambling Machines)と呼ばれており、世界中の58%に当たる450万台ものEGMが日本にあります。

今後日本にカジノが建設されるとギャンブル依存症が1~2%増えるとカジノ推進派も認めています。

 

ギャンブル依存症の原因

ギャンブル依存症になる原因は分かっていません。ストレスが駆り立てるのかもしれませんが、人は皆多かれ少なかれストレスを抱えており、そして当然皆が皆ギャンブル依存症に陥ってしまうわけではありません。寧ろ陥る方が稀です。

ギャンブル依存症に陥る人は昔からギャンブルが好きだったという人が多いです。20歳前後で一度くらいはパチスロに嵌ったことはありませんか。そういう人達は要注意です。些細なことがきかけとなってギャンブル依存症となってしまうかもしれません。

一方あまりギャンブルに興味を示さない人達は仮にギャンブルをやったとしてもリミッターを外すということはありません。こういう人達はまず大丈夫です。

例えば兄弟で同じ環境で育っても、一方がギャンブル好きで片方が興味を示さないケースもありますので、環境が原因だとも言えません。つまるところ本人の気質による所が大きいと言えそうです。

 

ギャンブル依存症の治療と対策

ギャンブル依存症はアルコール依存症やニコチン中毒のように化学物質の薬理学的作用に基づくものではないので、これといった有効な治療薬というものはありません。

治療法の代表的なものにGA(ギャンブラーズアノニマス)という、同じギャンブル依存症の人が集まるグループに入り、そこで体験を語り合い自分を客観的に見つめ直し、ギャンブル依存症からの脱却を目指すというものがあります。会費とかは必要ありませんので、ギャンブル依存症から抜け出したいという人は連絡してみるか、直接会合に参加してみるといいです。

吃音やアルコール依存症等でも同じような会合があり、同じような立場同士で悩みを打ち明けるのは重要です。

尚家ギャンブル依存症の家族会にギャノマンというものもあります。ギャンブル依存症の家族の対応にお困りの方は一度会合に出席してみるといいです。

ギャンブル依存症の一番の対策としては、兎に角お金を持ち歩かないことです。パチスロ店等誘惑の多い世の中ですので、お金を所持しているとどうしてもやりたくなってしまいます。ギャンブルに関するものからシャットアウトするよう心掛けて下さい。

飲む、打つ、買うというのは3娯楽にあたりますので、一度これらの旨味を味わってしまうと止めるのは難しいです。依存症に陥る前に歯止めを掛けるということを忘れないで下さい。

 

ギャンブル依存症の末路

パチスロ依存症の人は身近に見かけることもあるかと思います。大体20台前半に嵌ってしまうケースが大部分です。それまで学校の中という世界にいたため、外の世界へ身を乗り出すと案外何も分からないで歯止めが掛からなくなってしまうのです。その大部分は金が尽きて止めることになります。

人生が狂うまでやってしまうとうケースは稀ですが、そういう人でも会社や友人、彼女等を失った後に止めるケースがほとんどです。

この一線を超えると自殺や他の病気で死んでしまうことになります。

かくゆう私も学生の頃友人に誘われ初めてパチンコを経験し、初日に10分足らずで1万5千円ほど勝ちました。何だこんなに簡単に金儲けできるのかと思い、以後授業をさぼってパチンコ屋へ行く日もありました。最終的にはお金が尽きて行かなくなりましたが、留年すれすれの単位を落としました。成績はまあまあいい方で国家試験も受かったのですが、そんな私でも陥ってしまうところに恐ろしさがあります。

 

アルコール依存症

似て非なるものとしてアルコール依存症があります。お酒に対して快楽を覚え飲む量をコントロールできなくなり、家族を含めた周囲に迷惑を掛けます。お酒に頼らざるを得なくなり、酒が切れるとイライラしたり手が震えたりします。日本では80万人ほどいるとの報告があります。しかしアルコール依存症は化学物質の薬理学的作用に基づく依存症ですので、ギャンブル依存症とは発症の機序が異なります。アルコール依存症にもいろいろなタイプがありますが、一度飲むとぶっつぶれてしまうまで飲むタイプがギャンブル依存症に陥りやすいです。

 

貴闘力

曙相手に7回も金星を獲得、2000年には幕内最下位で奇跡の12連勝を成し遂げ幕尻優勝を果たした貴闘力もギャンブル依存に陥りました。最初のきっかけは、当時なけなしの金を競馬に注いで大勝したとのことです。やがて十両に昇進すると金と時間ができてますますのめり込むようになっていきました。睡眠と稽古以外はギャンブル付けといった感じです。自身の体験では勝った時の記憶しか残らず、負けた時のことは忘れてしまうそうです。

オーストラリアのカジノで5万円を8000万円にしたことがあるそうですが、その記憶だけは残り、実際はその何倍も負けていると言っています。年収の9割をギャンブルにつぎ込み、引退後には遂に野球賭博に手を染め、それがきっかけで離婚、さらには相撲協会を解雇といった典型的なギャンブル依存症の経緯を辿りました。人生の総額では5億円以上負けたと言っています。今でこそ焼き肉店をオープンしギャンブルから身を引いたそうですが、まだ心の葛藤と戦っているそうです。

インカジ(インターネットカジノ)店はなぜ違法なのか

記事編集日 2020.10.19

インカジ(インターネットカジノ)店の経営者や客が逮捕されたというニュースがたまに出ますが、ここではなぜオンラインカジノは良くて(グレーであるが)、インカジがダメなのかを説明します。

 

インカジ(インターネットカジノ)店はなぜ違法なのか

先々週(2019.11.8)仙台市青葉区国分町で、インカジ(インターネットカジノ)店の経営者2人と客2人など男女計4人が賭博の疑いで逮捕される事件がありました。インカジ店は客にポイントを買わせ、ネットカジノをさせて、ゲーム終了後の残高に応じて換金できるという仕組みだったそうで、3ヶ月前から開店していました。

同様のインカジ店逮捕事例は過去にも多数あり、最初の逮捕例は2006年2月の京都市中京区東木屋町のインカジ店ゴールドラッシュの例に遡ります。店員2人を常習賭博容疑で、客2人を賭博容疑で逮捕しました。その後2007年1月に店員に判決が下り、懲役2年、執行猶予5年、追徴金1億139万円という内容でした。追徴金からして相当儲けていたのではないかと思われます。

店側としては我々がカジノを開いているわけでは無く、オンラインカジノのサーバーは海外にあり、我々に法の及ぶものではないと考え、それを利用する客にも当然違法性は無いと説明していたそうです。要はこのサイトでも言っているオンラインカジノの正当性(実際はグレーゾーン)をそのまま主張していたことになります。

しかし実際このように何件も逮捕されたところを見ますと、オンラインカジノと言えど、国内で客に面等を向かって自分の店で利用させ、カジノゲームの仕組みから利益を上げていたということであれば、逮捕の対象になるのが分かります。

全てのカジノゲームには控除率があるため、長くやれば(大数の法則が働けば)必ずユーザーが負けるようになできています。例えば控除率の最も低いバカラですら2500回もやると、客が勝つことはおろかトントンに持っていくのさえ2.5%となるそうです。残りの97.5%は金額に差こそあれ、店側の勝ちです。

自分等はいくらカジノゲームに直接関わっていないとしても、客からこの仕組みにより利益を上げていたのであれば、それは違法なのも十分頷けます。例えばチップが現金に還元できない、ただ楽しむだけのカジノカフェがあったとします。客が来るかどうかは別として、これ自体は違法でも何でもありません。客は長く遊べば大数の法則が働き大体チップを減らします。第三者がこれを利用して、チップ換金代行業を務めれば、カジノの仕組みを利用して利益を得たことになり、賭博は明らかでその者が逮捕されるのは当然と思えます。

一方客の立場からするとどうなのかと思いますが、その場で換金できるとあれば、国内でカジノをしたのと何ら変わらなく違法性に該当するのも頷けます。

インカジ店を合法と見なすと極論、個人でカジノ店を運営できてしまうのです。そのカジノはオンラインカジノですので、ディーラーをはじめとする従業員は必要ありません。プレイヤーのイカサマを警戒する必要もありません。店としては楽にカジノの控除率より利益を上げることができてしまいます。これはどう考えても違法なのが分かるかと思います。必要的共犯(対向犯)という見地からも説明できてしまいます。(インカジ店が実質的に胴元で客がその利用者。)

インカジ店は違法なのかが分かったと思いますが、ここで改めてオンラインカジノを家でやるのはどうなのかを考えてみます。胴元は海外にサーバーを置いていますので、国内から違法性を持ち出して逮捕するわけにはいきません。それに伴い客にあたるプレイヤーは決済ツールを利用して換金できてしまいますが、対向犯の見地から違法性は微妙となってしまいます。そしてまだ国内でオンラインカジノの利用を取り締まる法律が無いので、オンラインカジノの利用自体がグレーゾーンです。言い換えると利用者を裁きにくいのです。これはオンラインカジノの違法性と逮捕を見てもその結果から分かるかと思います。その上個人のパソコンからオンラインカジノの利用を取り締まるのは現状では大変難しいです。インカジ店では現行犯逮捕できるのと対照的です。

まとめますとインカジ店は国内のカジノ性が高い上、現行犯になってしまいますので経営は勿論利用客も違法性に該当することを肝に命じて下さい。一方家からオンラインカジノを利用するのはグレーゾーンですので自己責任でプレイして下さい。

 

インカジと闇カジノの違い

日本で個人がカジノを営業するのは当然違法で、賭博開帳図利罪に問われます。闇カジノは隠れてカジノ営業するわけで当然違法行為です。インカジは上記の理由から違法となります。インカジは広義の意味で闇カジノに含まれると思いますが、営業形態的に違いがあります。

インカジはあくまでインターネットを利用したカジノサービスを提供しているため、店側は直接はカジノゲームには携わっていません。このため摘発された場合は常習賭博容疑にかけられます。一方闇カジノは自分等でテーブルを立て店側のディーラーもいますので、直接カジノゲームに携わっています。このため摘発された場合は賭博開帳図利容疑にかけられます。客はいずれの場合も現行犯のみの逮捕となり、単純賭博容疑にかけられます。

店舗状況としてはいずれも厚手のシャッターなどで外部を覆うか地下での営業が主で、大規模なものではありません。はっきり言ってしまえばショボイものです。外には見張りがいます。客は通常会員制で、会員になるためには紹介が必要か、キャッチに近づいて身分証などを提示しなければなりません。売上はカジノゲームの性質上大きいです。闇カジノのゲームはバカラか違法スロットであるところがほとんどです。そして売上金の一部が暴力団に流れていくところもあります。

 

刑法第185条(単純賭博罪に関して)

賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

 

刑法第186条(常習賭博罪と賭博開帳図利罪に関して)

1、常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。

2、賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。

 

インカジ店・闇カジノの摘発事例

2006年2月23日 京都市中京区東木屋町のインターネットカジノ店「ゴールドラッシュ」の店員2人(常習賭博容疑)と客2人(賭博容疑)を逮捕。翌年1月店員に判決が下り、懲役2年、執行猶予5年、追徴金1億139万円。

2015年5月13日 横浜市中区伊勢佐木町のカジノバカラ店「SPICE(スパイス)」の経営者中村崇嗣容疑者(35)と従業員4人を賭博開帳図利容疑で逮捕。客9人を賭博容疑で任意同行。3月下旬に開店し売上は1日300万円ほど。

2017年11月20日 東京都渋谷区道玄坂のインターネットカジノ店「ウォーリー」など2店を摘発し、海野健容疑者(44)ら16人を常習賭博で逮捕。ライブバカラの映像を使って賭博をさせた疑いで、2月より営業し総売上は2億1600円ほど。

2018年4月13日 東京都新宿区歌舞伎町1丁目のカジノバカラ店(2台)「ペアペア」の経営者坂本政彦容疑者(59)とパチスロ店(50機)「ソーキソバ」の経営者笈田悟(45)と他従業員2人を賭博開帳図利容疑で逮捕。2店は同系列で、客5人も賭博の疑いで逮捕。

2018年6月13日 横浜市中区福富町仲通の7階建て雑居ビル7階のゲーム機賭博店「タイガー」でパチスロ機(42台)を使って賭博をさせたとして原田幸子容疑者(45)と佐藤勝容疑者(36)を常習賭博容疑で逮捕。

2018年6月22日 東京都新宿区歌舞伎町の雑居ビルで客にバカラ賭博や違法スロットをさせたとして「フラワー」の責任者阿佐美利光容疑者(49)と「クランキー」の責任者大畑亮二容疑者(31)ら15人を賭博開帳図利容疑で逮捕。客13人も賭博の疑いで逮捕。2017年6月頃より経営し売上は一ヶ月で2000万円ほど。売上金の一部は、指定暴力団住吉会の傘下団体に流れていた疑いがある。

2018年6月29日 東京都渋谷区道玄坂のパチスロ賭博店「JAC」でパチスロ機(39台)を使って賭博をさせたとして撹上容疑者(48)ら従業員3人を常習賭博容疑で逮捕」。客3人も賭博の疑いで逮捕。今年の3月から開店し売上は1日40万円ほど。

2018年7月2日 横浜市中区相生町の雑居ビル地下1階にあるカジノ賭博店「Gets(ゲッツ)」でバカラ賭博(4台)やスロット(5機)をさせたとして店長の岡本高浩容疑者(34)と従業員3人を賭博開帳図利容疑で逮捕。前年の9月に開店し総売上は5億4千万円ほど。

2018年11月29日 東京都新宿区歌舞伎町でタブレット端末を使ったデジタルバカラ台で客に賭博をさせたとして嵯峨隆由容疑者(43)と従業員7人を賭博開帳図利容疑で逮捕。客3人も賭博の疑いで逮捕。半年間開店し総売上は1億4千万円ほど。嵯峨隆由指定暴力団住吉会傘下団体と関係があり、デジタルバカラ台を開発し特許登録もし、全国の違法カジノ店に販売するつもりでいた。

2020年10月16日 歌舞伎町の雑居ビルでバカラ賭博をさせたとしてカジノ店店長の斉藤大心容疑者(43)ら男女6人と客2人が逮捕されました。今年1月から週に6日間営業し、緊急事態宣言中もアングラバカラにコロナは関係ないと客に伝え、ひと月に700万円ほど売り上げていました。

カジノ法案関連

 

2016年12月カジノ法案「IR推進法案」可決

2016年12月6日「カジノ法案」が衆院で可決されました。カジノ法案とは特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法案でIR推進法案とも呼ばれています。これを受けて特定複合観光施設区域整備法が2018年6月19日衆院を7月20日参院を通過し可決しました。カジノゲームは勿論ギャンブルで、当然ながら日本はギャンブル禁止国です。カジノ法案はこれに例外的な法的根拠を与えるものです。

もともと日本でカジノ解禁が言われるようになったのは2000年当時石原慎太郎都知事が「東京にカジノを作りたい。」と公言したのが始まりでした。やがて自民党内で持ち上がり、これを率先したのが野田聖子議員ですが、小泉純一郎首相が掲げる郵政民営化に反対していたため自民党を離党し、カジノ解禁は一旦影を潜めます。しかし安倍晋三内閣が発足しますと再び自民党に戻ってきました。

またちょうどその時シンガポールでカジノが解禁され、観光客が増え、GDPが大きく伸びたことを受けまして、2010年に超党派の議員(自民党が最も多い)で構成されます国際観光産業振興議員連盟「IR議員」が誕生し、翌年にIR推進法案を発表し、2013年12月に議員立法の形で衆議院に提出されました。そして3年越しに可決されたわけです。

IR推進法案とは言わばIR推進を政府に促す法案であってまだ具体的なものではありません。実際どこに作るのか、運営やルールはどうするのか等、具体的なことは今決めている段階なのです。最終決定は政府が下すため、現段階ではカジノを日本に建設しない余地さえあります。しかし動きを見ている限りではやはり建設する可能性の方が高そうです。

 

IRとは

IRとは「Integrated Resort」の略で、統合型リゾートといった意味です。つまりカジノだけではなく、国際会議場、展示場、ホテル、ショッピングモール、レストラン、劇場、映画館、アミューズメント施設、スポーツ施設、温泉といったものが複合した観光施設になります。モチーフはラスベガスです。特に国際会議場や国際展示場は比較的大きなお金が動くトラベラーを呼べる施設で、MICE「Meeting、Incentive tour、Conference、Exhibition」と呼ばれています。要はこれらを集客装置としてお客を呼び込もうというもので、施設をギャンブルではなく文化的・学術的なものにカムフラージュしようとする狙いもあります。実際に他国を見てみますと、ほとんどはカジノによる収益でこれら単独では利益を出すのは難しいようです。

 

カジノとはどういうところか

基本的には広いフロアにいくつものテーブルがあって、それぞれのテーブルにはディーラーがおりカードを配ったりしています。ゲームにはブラックジャック、バカラ、ルーレットがあります。一画にはスロットマシンもあります。窓は閉ざされており外の様子は一切分かりません。国によっても大きく異なります。

小規模なカジノの多いヨーロッパでは高級感を重視する傾向があり、ドレスコードを着用しないと入れないところもあり、まさに王侯貴族の社交場といった感じです。大規模なカジノの多いアメリカは逆に大衆的な開けた空間で、アミューズメントショーやアトラクションなど家族でも楽しめます。マカオも大半はアメリカ資本なのでアメリカの大規模カジノに近いです。

 

カジノを設置する目的

カジノを日本に作る目的は経済効果これに尽きます。ではどれくらいの経済効果があるのかを考えてみます。各国のゲーミング市場(売上高)を見てみますと、2018年のマカオが40施設で4兆1135億円、シンガポールが2施設で5407億円、ネバダ州が272施設で2兆8000億円です。これらから大雑把に推計しますと、複数の施設が稼動すれば日本の売上高は年間2兆円レベルと予想されています。

さらに観光客による収益や効用の増加、地域の活発化も含めれば年間で7~10兆円もの経済波及効果があると言われています。

 

日本が目指しているカジノ

日本が目指しているカジノを決定している範囲で具体化します。

 

日本のカジノは民営である

カジノ事業には建設費や運営費などを含めて5000億円~1兆円ほど必要です。必ず成功するとも限らないカジノ事業に国が税金で投資するわけにはいきません。よって日本のカジノは民営ということになりますが、どこの民間業者が入るのかはまだ決まっていません。当然日本の民間業者にカジノ事業経験があるはずは無く、外資も参入してきています。ラスベガスサンズ社等がその候補です。大方の見方では国内企業と外資の合弁になる可能性が高いと見ています。

 

カジノ利益の分配はどうなるのか

国内居住者に対して6000円の入場料を課し、内3000円が国へ国庫納付金として、内3000円が地方自治体に認定都道府県等納付金という形で納められることになります。(特定複合観光施設区域整備法の176条と177条)

他にカジノで出た収益の内15%が国へ国庫納付金として、15%が地方自治体に認定都道府県等納付金という形で納められることになります。(特定複合観光施設区域整備法の192条と193条)

残りの収益をカジノ事業に携わる企業の、持ち株比率に応じて分配されることが予想されます。

 

ターゲットは誰なのか

先にも述べましたように国内居住者に対して6000円の入場料を課すため、基本的にはマカオやシンガポールを習って外国人、特に中国人がターゲットと見込んでいるようです。しかしこの6000円が高いかどうかというのは個人の価値観ですので、日本人もある程度はターゲットになっているのは明確です。外国人専用カジノではないですので、はっきりとしたターゲットは定めていない感じです。

 

日本国居住者への入場規制

○20歳以上で、マイナンバーカード等の身分証の提示が必要

○1回(24時間)につき6000円の入場料が必要

○連続する7日間での入場回数は3回まで、連続する28日間での入場回数は10回までと限定

 

どのゲームを設置するのか

政府はカジノで提供するゲームを限定する方針で、ルーレット、バカラ、ブラックジャック、スロットの偶然性が大きいゲームのみにしています。スポーツベットや麻雀等は禁止しています。ポーカーはスキルが大きくものを言うゲームですが、世界的にメジャーなゲームですので検討中です。

 

マネーロンダリング(資金洗浄)の防止

カジノと手を組んで、カジノで勝ったことにすれば、簡単にマネーロンダリング(資金洗浄)ができてしまい、闇金を合法的な表金に変えてしまうことができます。勿論どの国もマネーロンダリングは認めていませんが、一部の中国人富裕層や共産党幹部等はマカオのカジノを利用してこれをやっているのも事実です。カジノ側としては手数料が入るため歓迎で、寧ろ相手はVIP客なので大きな収入源なのです。しかし日本のカジノはマネーロンダリングを防止するようです。

 

反社会的勢力と一切関係を持たない

日本でカジノと言えば、一昔前までは一般の人の入れない裏カジノのことで、暴力団関係者が取り仕切っていました。しかし今回のカジノは合法的なものですので、暴力団組織の介入や犯罪の温床になることを断固排除するようです。

 

地域風俗環境の悪化を防ぐ

カジノはギャンブルですので、負けた人が金欲しさのあまり犯罪を犯してしまうことが後を絶ちません。またカジノホームレスが出てしまうことも予想されます。自国民に開放している韓国の江原ランドはその例です。政府はカジノへ入るための身分証の提示や入場制限することで過度にのめりこまないようにし、このような治安悪化を防止するみたいです。

 

機関を設けてギャンブル依存症対策をする

2017年度の厚生労働省の報告によりますと、日本でギャンブル依存症疑いのあるものは320万人も上がり、成人の約3.6%にあたるそうです。世界にほとんどは1%前後なのに、日本だけこのように高いのは身近にパチスロがあるからです。実際にギャンブル依存症の80%近くがパチスロユーザーなのです。これらの依存者には既に対策が必要なのですが、カジノ開放にあたってより増えることが予想されるため、カジノへの入場規制の他、機関を設けて対策するそうです。

 

カジノはどこにできるのか

2018年4月27日、政府は日本へのカジノ設置を当面3箇所以内と限定しました。但し最初の区域認定から7年後には見直せます。カジノの有力候補地としては横浜の山下ふ頭、大阪の夢洲、北海道の苫小牧、長崎のハウステンボス、東京のお台場、千葉の幕張、和歌山のマリナーシティ、沖縄の海洋博公園・美ら海らが候補に名乗りを上げています。

 

日本のカジノに参入する企業

候補地が決まれば、次はどこの企業が入って運営するのかです。仮に3箇所だとしたら3つの企業が入って運営することになります。日本企業ではセガサミー、ユニバーサルエンターテイメント、外資ではラスベガス・サンズ、メルコリゾーツ&エンターテイメント、ギャラクシー・エンターテイメント、ハードロック、ウィン・リゾーツこの辺が有力候補となりそうです。特にラスベガス・サンズは1兆円以上を投資する準備があると意気込んでいます。

 

いつごろ開業されるのか

最初は東京五輪の2020年を目安にしていましたが、これはとても無理ですので、今は2025年頃を目処にしています。

 

私見

ゆっくりではありますが、日本でのカジノ解禁に向けて着実に進行しており、遅くとも10年以内に開業されることはほぼ確実だと思います。

しかしカジノを解禁しただけで儲かるのかと言えばそうとも思えません。日本が目指しているカジノは全うなカジノで、これを見た限りでは規制が厳しすぎるからです。

日本人をターゲットにするなら6000円の入場料は高いし、外国人をターゲットにするならお金を回る仕組みを作らなければなりません。現在外為法では日本への入出国は100万円が上限で、それを超えるなら事前に税関に申告しなければいけません。これではとても話になりませんので、カジノへの大金の持ち運びを国境を越えて容易にできるようなシステムを作らなければならないと思います。

またどの国のカジノでも収益の60%以上はVIP客によるものです。カジノの売上高が世界最大となったマカオの例を見ましても、中国人富裕層からの収益は約60%以上を占めますので、日本でも中国人富裕層の取り込みは成功の可否を大きく左右するものと思われます。彼等は必ずしもカジノでゲームをしに来るとは限らず、マネーロンダリングをしに来る人も少なくありません。マカオのカジノでは手数料を取れるため暗に了承しているのですが、日本では建て前上ではこれを認めていません。

実際には参入した企業は事業としてやるわけですので、顧客にニーズを敢えて外すようなことをするとは思えず、法の目を潜ってやるかもしれませんし、税収の欲しい政府としても黙認するかもしれません。いずれにせよ上に挙げたような全うなカジノを作ったところで、売上は予想の半分以下だと思います。

日本庭園を背景に花札やおいっちょかぶ等日本固有のゲームを取り入れたり、マカオのジャンケット様のシステムを取り入れたり、何か工夫しないと韓国のカジノと大差ない結果になると思います。

 

現在のカジノ解禁に向けた進行状況

現在は特定複合観光施設区域整備法ができ、2020年1月7日にはカジノ管理委員会が設立することが閣議決定しました。カジノ管理委員会とはIR事業者の監督とギャンブル依存症に関する公共政策をする委員会で、5人(任期5年)で構成され、スタッフは約100人だと想定されています。これができればカジノの誘致場所を決定し、参入する企業を決め、着工することになります。